ごにょごにょ
小説とか日ごろの雑記を投げっぱなしにしてるブログ。 妄想全開(何
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パレあや!
「パレット。」
「あ、あらら? もうお兄ちゃんとは呼んでくれないんだね?」
『いたる?』
「うふふ、まるでパレットの方がそう呼んでほしいみたいだわ。」
「え、えと、ごめん、そんな変な意味じゃないんだ。」
『いたるー』
「僕は記憶が無くて、兄妹とか家族もいないからなんかそう呼ばれたのが――」


ブチッ


 俺が覗いていた画面が真っ暗になった。どういうことだ、俺はPOWERボタンなんて押してないぞ。
 っていうか、めちゃくちゃいいところだったのに誰が――。
 と、怒りのスキルを発動させようとしたところで、暗くなった画面に光りがあたって自分の後ろの状況が垣間見えた。
「つ じ み や さん?」
 ぽんと肩に手をおかれる。その柔らかい手に順じた柔和な笑みを浮かべる黒髪の女の子がそこにはいた。
 しかし、この笑みはいけない。これ以上いけない。これは笑顔の能面だ。一つ皮の下は計り知れない黒い怒りが煮えたぎっているのが『人間の』俺でもわかった。
 それでもヒトには譲れないものがある。
「ごめん。頼むからこの支援会話だけは聞かせて」
「ダメです。同居人が画面に向かって気持ち悪い笑み浮かべてるところなど見るに堪えません。」
「――射命丸文様」
 俺は3DSの電源ボタンをさりげなく押しながらその女の子の名を呼び、彼女に向き直る。
 すくったらサラサラしてそうな黒髪、見てると吸い込まれそうな深紅の瞳。ボンキュッボンボディー。
 彼女の姿が俺の昔使ってたお古の黒ジャージじゃなかったら、皆からの眼差しはそれはそれは大層なものになっているであろう。
「はい?」
 彼女は笑顔のまま聞き返してくる。俺も負けていられないと仕事の営業スマイル。男の笑顔をみせつけていく。
「今、この辻宮格の10年以上前からの恋が成就されようとしているのです。誠に申し訳ありませんが、もう5分少々お待ちいただいてもよろしいでしょうか?」
「今日の当番、つじみやさんですよね?早く作ってください。」
「……ここは乗ってほしいんだけどな。」
 完璧な営業スマイルに敬語なのにやすやすと貫通してくるあたりこの眼の前にいる奴は化け物。
 いや、うん、本物なわけだが。
「私、お腹すいたんです。」
「いや、この支援会話ぐらい……よくないすか?」
「却下します。今すぐご飯つくってください」
「えー。ていうか射命丸だって当番サボりまくってるじゃねーか。自分の時だけ文句いうのやめよ?」
 ていうか近くにコンビニあるじゃん。
「コンビニなんてそんな日暮里の食卓と同じもの許されませんよ」
 盛大に日暮里がディスられてるが確かにあの台所を活かさない家主2はDEKINもありえる。
 まあ底辺家主だからあれなんだけど……。
「じゃあー、ガストでお金はやるからさ。好きなもの食べてきなよ。ファミレスおいしいよ?」
 と、言ってもう一度ゲーム画面にもどって続きからはじめるを押したところで文にもう一度POWERボタンを押された。
 ブチッという音が悲しく響く。
「私は自炊が好きなんです」
「あーもう、自炊ってのは自分で炊くって書いて自炊だろ!」
 俺に作らせて自炊ってのは何かがおかしいだろ、何かがぁ。
 たった五分でいいのにこの同居人は自分のこと棚に上げてわがまま言う。今回は絶対につくら――。
「いいから作って」
 急に言葉に冷気が含まれた。ぞぞぞっと背中に寒気が走る。別に霊感とかこれっぽっちもない体質だと思うが、今確実に目の前の妖怪は妖気を全身からはなっているのはわかる。
 ポリポリと頭をかいて、ちらりと射命丸をもう一度みやると彼女は潤った真っ直ぐな瞳をこちらに向けていた。
 表情はばっちり笑顔で、ウィンクまでとばしてくる。こいつあざとい。
 恥ずかしくなって目線をはずすが、もう一度合わせた時点で負けが確定したようなものだ。このゲームはリセットできるが現実はリセットができない。
 なんて……ことだ……。
「わかったよ。作るからその人をとってくうような目で見るのはやめてください」
「妖怪は人を食べるんですよ」
「やめよう?できることを口にするのはやめよう?」
 俺が本気でびびってるとわかったのか、文は満足そうに俺の側を離れると一つしかない敷布団の上にあぐらをかいてそこらへんに散らかってる漫画を適当にとって読み始めた。
 これが大人気の烏天狗射命丸文の真の姿かと思うと、なんていうか現実ってあれだなーとか思いつつも仕方なく俺、辻宮格は台所へと向かうのであった。


「はい。ボンゴレビアンコ」
「わーい。頂いちゃいますねー」
 20分ぐらいかけて作った手作りソースのボンゴレビアンコ。ボンゴレというのはあさりのことで、ビアンコは白ワインのこと。ちなみにボンゴレロッソというのもあってこちらは赤ワインだ。
 あさりの味付けには割りと自信がある。砂抜きしたあさりを白ワインとバターと塩コショウで蒸し煮にするのだが、ここにはちみつをいれて甘味を際立たせるコツだ。最初いれたとき「またすぐ流行に乗るんですか?」とか言われたけど俺はDARKBEE’S KITCHENなどというものは見ていない。
 はちみつかけて寒いギャグかましたあとに石のようなもので殴られておわるオチというバラエティ料理番組なぞ俺は見ていないのだ。見てませんよ?
「うんうん、おいしいです。やっぱりいたるの料理はおいしいですね」
「まあ料理得意な友達がいて、そいつのレシピパクってるだけなんだけどさ」
 と口ではいうものの、あんだけ嫌々作っておいてなんだがおいしそうにしてくれてると作りがいあったなーとか思ってしまう。
 こんなところだから毎回わがままを許してしまうのかもしれない。
 ――なんかもうハマってる感が否めません。
「おいしかったです。ご馳走様でした」
「うむ」
「ところで、この女の子も妖怪なんですか?」
「んあ……おい!なに勝手にお前は俺のデータをプレイしてるんだ!」
 あんだけやるないうておいて自分は勝手にやるからこのてんぐほんと酷い。
「いいじゃないですか。さっきは気持ち悪いといってしまいましたが、いた――いえ、パレットさんが恋するキャラってどんな傾向なのかなってとても気になります」
「……手帳と羽根ペンを俺に預けたら話してやるよ」
「あやや、鋭い。あなたまさかてんぐの末裔?」
「誰でもわかるわ!!!」
「ふっふー、そうですよねー。まあ、いたるみたいな凡人をネタにしても別に新聞の売り上げ伸びませんから載せませんよー」
「凡人で悪かったな。」
「えぇ、ちょっと国家資格もってるからって偉そうにしてるあたりとても凡人です。」
 こいつマジでうぜえ。
「で、いいから教えてくださいよー。この女の子の設定とか」
 ここまで話の流れを持ってこられるともう切り返すのは不可能に近いのでしょうがないからその設定を話してやることにした。
「ごにょごにょごにょ――」
「へーぇ、なるほど。」
「寿命差が好きなんだよ。あと種族差を超えた愛とか?」
「ふぅん」
 文は口のあたりにペンを持ちながら何か考え事をしていたが、少しして何か嫌なことを思いついたようでにやついた顔で俺に言葉を投げる。
「私は千年を超えて生きる烏天狗の妖怪です」
「お、おう」
「どうです?どうです?」
 こいつうぜえ……。狙いどころがドストレートなのがうざい。
「好きって言って喜んでくれるなら好きっていうけど。遊ばれてるから言わん」
「もー、素直じゃないんだからいたるわー。きちんと気持ちは伝えないと伝わりませんよ?」
「はいはいはいはい。僕は射命丸文さんのことが大好きです。超好きです!」
 これでいいですか、射命丸さん。嘘はいってないよ、嘘は。
「もー、そんなん全然気持ちはいってなくてつまんないです。いたるは私との関係遊びだと思ってませんか?」
「ガチだったら色々問題があるだろ。」
 いやまあ、結構好きって言うか、かなり好きなんだけどさ。
 ていうか遊びだと思ってるのはむしろそっちな気もするんですが。
「種族差とか異世界の住人だからとか気にしてたらこの子と結ばれませんよー?」
 とんとん、と3DSの画面を小突く文。
「その女の子は画面からでてこねーから。」
「私はでてきたじゃないですかー。」
「お前は例外。」
 二次元と三次元だといろいろ違うんだよ。チガウンスヨ。
「てかもー、寝かしてくれ……。明日俺朝シフトなんだ」
 うざったそうな表情を向けると文も流石にやめてくれた。
「しょーがないですねー。十分遊んだし寝ますかー」
 と、食器も片付けもせずに部屋に一つしかない敷布団にダイブした。こいつほんとに女の子なんだろうか。
 あっ、ていうか俺のイルカ抱き枕使うな!次の日朝仕事のやつが使うって約束だろ!
「もうこのイルカは私のですー。おやすみなさい、いたる」
 ピッとワンボタンで消灯された。こいつ手慣れてやがる……。
 仕方ないから文と頭を反対にして普通の枕を頭にのっけて寝る。
 ふぅ、とため息をついて眠りにつく。支援会話は文がいないときにやろう、うん。
「ほんとはどうなんですか? 私のこと邪魔だとか思ってませんか?」
 唐突にそんな声が暗闇から飛んできた。暗くて表情は見えないが、なんか真面目に応えた方がいい雰囲気がある。
「……記者ってのは言質とらないと気が済まないタイプなの?」
「清く正しい新聞にするにはそうするべきだと言ったのはいたる。あなたですよ。」
 そういえばそんなこと言ったような気がする。あれは確か初めて新聞を読んだときだったような……。
 もう忘れたし思いだしてると早く返事しろとか言われそうなので答えることにした。
「俺は記事のネタにしないんだろう?言質とる必要ないんじゃない。」
「そういう昔の話をひっぱってくるのはやめてください。時効ですよ。」
「昔って……カップヌードルもできないぐらいの時間だけど。」
「私は最速最強シャッターガール、射命丸文。時間だっておきざりにしてみせます。」
 わかってたけどプライド高いなー。
「わたくし、辻宮格はFEのチキよりも今一緒に布団に入ってる射命丸文さんの方が好きです。間違いありません!」
 暗くて誰もみてないけど敬礼とかしてみた。ノリで。
 そしたら。
「うむ、よろしいですよ。」
 いつのまにか文の頭がこっち側に来ていた。
「今日はこっち頭で寝てあげます。」
「それは……ありがとうございます。」
「おやすみなさい。」
 と、頬に何か柔らかい感触がした。その直後に文はがさりと後頭部をこちらに向けてしまった。
「お、おう。おやすみ。」
 明日朝から仕事なのにどうしてこんな目が覚めるようなことをしてくれるんだろうか。もしかして嫌がらせか?嫌がらせなのか?
「――ま、いいや」
 好きな人にキスされて嫌がらせっていうのも酷い言いぐさだ、と俺はぺしっと自分の頭を叩いて文に背中を向けて寝ることにした。
 明日からFEはちょっと抑えて洗濯物と炊事ぐらいはやろう、そう心に決めて。

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