ごにょごにょ
小説とか日ごろの雑記を投げっぱなしにしてるブログ。 妄想全開(何
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てんある! 1話
身内ものです。
「ぐあああああああ!!!!!」
 何が起こったのか俺の脳では理解することができない。
 ただ地面にたたきつけられていること。右腕の感覚が全くないこと。そしてそれは誰か他人の手によって行われたもの。
 ――絶望的な状況だということだけはわかった。
「ククク、無様だな暗黒蜂或也よ」
 一つの声が俺の名前をいった。そしてその声には聞き覚えがある。
 顔だけあげて奴の名前をいった。
「貴様は――梅原たかし!」
「家主1は俺のものだ……!」
 梅原たかし――さる有名な神拳の伝承者である。
 流石にその名は伊達ではなく、構えもせずにゆらりと立ちふるまうその姿は正に世紀末の覇者を彷彿とさせる。
 不意の一撃は右腕は使えない。地面にたたきつけられていて全身も痛い。相手の有利なのは確定的に明らかと一般人は判断するだろう。
 しかしこの程度の有利、有利にもならない! ダイヤでいうと0.3不利ぐらい。5分と一緒である。
 立ちあがる。少し怯んだが、冷静になればこんなものどうということはなかった。
「貴様、どこにそんな力が!」
 梅原たかしは戦慄の表情を浮かべる。
「フ……日暮里のダークビーを舐めるなよ」
 生憎構っている時間は無いんでな、と一つ叫ぶと俺は左腕に力を込める。なんで時間が無いのかは忘れたが。
「その技はエレメンタルマスター秘奥義!」
「くらえ……アルファーニ――」
「やめろっ、やめてくれえええええ!!!」
「バスタァァァァァァァァ!!!!」


「あ、いてっ」
 と、迫真の叫びをあげたところでつり革に頭をぶつけて俺はつい声をあげてしまった。
 なんだなんだなんでこんな時につり革が――つり革?
 ふと、まわりを見渡す。
「山の手線? あれ?」
 ……どうやら夢を見ていたようだった。右腕がどくんどくんと脈を激しくうっている。そして熱い血液が流れ込んでいくのがわかった。
 どうやら俺は山の手線で右腕を下にしてぐーすか寝るというとんでもないことをやってしまっていたらしい。
 と、いうかだ。今飛び上がってつり革にあたったということは、だ。
「フスッ」
「……キモッ」
 ものすごい痛い視線があちらこちらから降り注いできていた。とりあえず中途に立ってるのも変なので何事もなかったかのように座り直す。
 それでも「夢の台詞を大声でしゃべっていた」などという事実は消えない。
「日暮里―、日暮里ーです。お降り忘れの無いよう、ご注意ください。日暮里ー、日暮里ー」
 鬼の目にも涙か。俺は荷物を持つと電車から逃げ出すように降りた。


―――――


「死にてぇ」
 日暮里の長いエスカレーターを降り切ってポツりと呟いた。
 色々今の現況を整理してみたのだが、とりあえずはもう24時をまわっているということ(山の手線数周コース)。
 今日は仕事が終わったあとに先輩や友人と秋葉原のゲーセンで遊ぶ約束をしていたということ。
 ハナキンで仕事も定時だったというのになんということなのだろう。
「うわぁ、着信とかメールが……」
 俺は少し頭を抱えた後全てをかなぐり捨ててメールの新規作成ボタンを押す。宛は梅原たかし。
「5万出禁ポイント」
 ピッピッ。送信完了。あいつは許さない。
 携帯をしまう。俺はフラフラとしながら駅前を歩くと恒例のキャバの勧誘にひっかかる。
「お兄さんどうです?」
「てんこ」
「へっ?」
「てんこを所望する」
「いや、えっとてんこっていう人は……」
「じゃあダメ!」
 勧誘のプロであるキャバのお兄さんも完全に怯ませるほどの威圧。決まった。
 俺はてんこ――比那名居天子が好きだった。言語表現で表せるほど生易しいものではないのだが、敢えて表現するとしたら「好き」だ。
 このなんともえいない気持ち、みんなもわかってくれるとは思う。
 そんなこんなで華麗にお兄さんを振り切って一つ目の信号待ち。
 大げさに息を吐いた。
「はー、てんこ降ってこねーかなー」
 そんなむなしい願いは冬の空気に霧散するのであった。

――――

「つれーわー」
 ただいま、と言っても誰もいない一人暮らしのマンションに帰ってきた。
「……あれ? 部屋の電気がついてる?」
 おかしい。今日朝出勤するとき確実に電気は消したはずなのに……。
 そう俺がいぶかしんでいるとリビングへのドアのガラス越しに動く影が見えた。
 泥棒か? だとしたら外に出て警察を呼ぶのが一番安全だが。
「やばお、俺の秘密のタンスをあけられたら!」
 つう、と一筋の汗が額を伝った。それは非常にまずい。
 俺は無駄に整った台所からフライパン(この家に来てから未使用)を取りだすとリビングへのドアに手をかける。
「お前、その右のタンスあけてな――」
 開けてないだろうな!?という多分世界で一番酷い台詞をはきかけて、俺はやめた。
 別に口封じをされたわけではない。声を出すのをやめたのだ。
 不法侵入者はリビングの真ん中でぺたりと両膝をついて座り込んでいた。
 肩の下まである整った青い髪、半袖のワンピースのようなものを着ている。そしてその右手の側には桃が乗った黒い帽子。
「なによ。あんまりにも部屋が片付いてるから人いないと思ったのに」
 不機嫌で、少し面白そうな情がその口上に含まれていた。そいつは顔だけこちらに向ける。女の子だ。
 いや、女の子だ。ではない、俺は知っている。今まで何度も見てきた。何度も手を伸ばそうとして液晶画面に阻まれた。
 比那名居天子――いや、てんこが次元を超越して今まさにこの俺の前に降ってきたのだ。
「あなた、ここの家の人なの?」
「あっ、あたりめーだろ! 俺は日暮里の家主1だ」
 以前、たかしと『もし嫁にあったら最初に何を言う?』という話をしたとき俺は「胸を触らせてくれませんか?」と言うと堅い約束を交わしたのだが、見事にその約束は打ち破られた。
「何が当たり前なの? あなたがこの家に不法侵入している可能性だってあるでしょう」
「不法侵入してる分際で何まともそうなこといってるんですか!?」
「だって窓開いてたんだもん」
「なるほど。オートロックなのになんで――って、侵入の仕方をきいたんじゃねえ!」
「細かいこと言わないでよ」
 あんまりこまごましてる男の人って嫌、と言葉を続けられてちょっと傷つきそうになったが何かがおかしい。この場の空間の何かが――。
「こまかくねーし」
「ところでここまで飛んできちゃってちょっと汗かいちゃったんだけど、シャワーっていうの?貸してくれない」
「いやいやいや、何でおま……」
 お前を風呂にいれなくちゃいけないんだ。と言おうとして言えなかった。
 目の前のてんこが俺の風呂に入りたいと言っているんだぞ。
 ドギマギしてる俺にしびれをきらしたのか、てんこは立ちあがると俺の目の前に迫って両手を腰にやった。
「どうしたの。早く案内してよ」
 明らかに怒っている。俺は反動的に「すっ、すいません」と言ってしまった。明らかにおかしい流れだ。
 しかし俺は右手に持っていたらしいフライパン(ドアを開けて2秒後ぐらいに持っていることを忘れていた)を台所に戻すと風呂場へ案内してしまった。
「温度は自動で調整されるからこれひねれば大丈夫」
 恐らく幻想郷にはこんなものは無いだろうと律儀に説明する男、暗黒蜂或也。
「なるほどー。じゃああんたはさっきの部屋で待ってて」
「っていうかな――」
 なんでお前ここにいるのか、とかシャワーを浴びさせる前に質問を浴びさせたい。
 俺ははっきりといった。
「俺の名前は暗黒蜂或也だ。あんた、じゃないよ」
 服をぬぎかけようとしていたてんこがふと手をとめて俺に振りかえる。
「じゃあ、あるやでいいでしょう?」
「合格だ」
「当たり前でしょ。じゃあ、さっさと部屋もどって」
「はい」
 ぴしゃっと扉をしめられた。俺は部屋にもどる。
 110番とダイヤルされたスマフォをきるとバタッと服も脱がずに座った。
「じゃあ、あるやでいいでしょう?」
 てんこの台詞をもう一度呟く。ものすごい充足感だ。そして仰向けになる。
「これでいいよな。橘先生……」
 めちゃくちゃな展開に、俺は高校時代の恩師の名前を呟いていた。


――――現在


「で?で!? 次はどうなるんですか!?」
 同部屋。別の時間軸。俺は射命丸文という幻想ブン屋に質問攻めにあっていた。
「これ以上は嫌です! 言いたくありません!」
「こっからじゃないですか! 山手線のあるやの武勇伝とかを記事にしたいわけじゃないんですよ!」
「武勇伝じゃねーよ!!」
 突っ込みをいれるのも慣れた。慣れたくないが。
「『てんある!!』を刊行するうえでやはり馴れ初め話はしっかりしませんと」
「その記事絶対燃やす!」
「いいから早く次話してくださいよ」
「嫌です!」
 絶対話さない。相当迫られたので仕方なく話してやったがこれ以上は無理ッ!
 そう拒絶すると射命丸は困った表情をした。が、にやりと口元を浮かべる。
 そして俺の耳にささやいた。
「天子さんのあんなことやこんなことの秘密、教えてあげますよ」
「チッ、しょうがねーなー」
 俺は続きを話すことにした。
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