ごにょごにょ
小説とか日ごろの雑記を投げっぱなしにしてるブログ。 妄想全開(何
スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
初詣アイス
豚得2号。


「はー寒い寒い。冬になると布団から出づらくなって困っちゃいますね」
 レジアイスの彼女さえ寒さを感じる真の冬の朝。
 そんな朝は年のはじまりの朝でもあった。
「初日の出みようと昨日早く寝たんだけどな。うっかり二度寝してしまいました」
「はー、今日は寝正月でいいかなっ」
 てへっ、と舌を出して彼女――サラはもう一度布団をかぶる。
 数秒後、がさりと布団を自分の体からひっぺがして上半身を起こした。
「レクサスくんたちと初詣いくんだった!」
 時計の針は午前10時――約束の時間ぴったしだった。
 どうしてこう言うときって直前か直後に起きるんだろう、と。
 起きるならもっと早くか、それとも完全アウトのもっと遅くかにしてほしいものだ、と。
 サラはごちりながら約束の時間から何分の遅刻ですむかの自分自身とのゲームを繰り広げるのであった。



――――


「お、遅れちゃってごめんなさい!」
「いいですよ」
 初詣の神社にサラが息を切らしてたどりつくと、ニット帽にマフラー、ウインドブレーカー、手袋と重装備のキノガッサが立っていた。
「10分くらいは遅刻に入りませんよ。」
 柔和な笑顔で返す彼、セリエは気遣いのできる男だった。
「でも足がガクガクされてますよ……」
 寒さを心配するサラ。それでもセリエは柔和な笑顔を崩さずに首を横にふった。
「これはレクサスがこない怒りの震えです」
「あっ、なるほどー」
 あくまで寒くないよアピール。そしてレクサス――元気はちゃめちゃなリザードが来ていないことも伝える一石二鳥の台詞だ。
「おぉーい!」
 というところで威勢のいい声が遠くから聞えてきた。
 初詣のひとだかりをホップステップジャンプに月面宙返りで飛び越えてセリエとサラの前にどんと着地した。
「着地のあとにふらついたから9点」
「ちぇっ、でも時間にはまにあ――ぶはぁ!」
「10分遅刻しとるわ!」
 怒りのばくれつパンチがレクサスの腹をめりこませた。
「あらあら、レクサスくんには厳しいんですね」
 クスクスとサラは口に手をやって笑う。
 そりゃあ遅刻はいけないからね、とセリエは返した。
「そうです、遅刻はいけませんよっ」
 サラもうんうんとうなずいてうずくまるレクサスをぺちっとデコピンした。レクサスは相当パンチがきいていたのかデコピンで地面にあおむけに倒れてしまった。
 セリエもサラも笑う。レクサスはむせている。
 新年しょっぱなから騒がしくも楽しい一日が始まるのを全身で感じるサラであった。



――――


 鳥居をくぐり境内の石段を真っ直ぐに歩いていく三人。
 ふと、サラが浮かんだ疑問をそのまま口にだした。
「ここ。何が祀られてるんでしたっけ」
「毘沙門天!」
 即答のレクサスに即答のセリエ。
「バッカみたいだね……。ここ神社だぞ」
 初詣に行くのは基本的に神社だ。毘沙門天は基本的に寺である。
「でも最近は寺に初詣いくひともいるみたいですよ」
「まあ、社寺とかなんか色々混ざりはじめてたりはしますね」
 そうですね、と頷くセリエ。
「誰でもいいじゃん。お賽銭あげてお願いしますって手を合わせてるんだから」
 神様は神様だろ。というレクサスにサラは両手を前であわせてうんうんと頷く。
「確かにそれでもいいかもしれませんね! 信じる心は大切です」
「まあ、神社に来た以上その神様の名前ぐらい知っておくのはマナーだとは思うけどね」
 セリエはこづきつつも悪くない考えだなと思うのであった。



――――



 パンパン!と学生の3人は揃って手をあわせた。
 みな目をつぶり新年のお願い事をすると賽銭箱から離れた。
「お前ら何頼んだんだ? 俺は野球のレギュラー!」
「僕は中継ぎあたりで楽したいって」
「おい、サボるなよ」
 ちなみにセリエは今先発である。三番手ぐらいの。
「中継ぎの方が貢献できそうなんだもん」
「俺はお前の背中を守っていたいんだよ」
「さらっとこっぱずかしいこと言うなよ……」
 寒さで首をすぼめていたセリエは更に首をすぼめた。
「仲がいいんですねー」
「まあなっ!」
 にしし、とレクサスは笑う。セリエはまあそうですねーとこともなげに言った。
「サラは何を頼んだの?」
「私ですか?」
 手を口元に寄せてやや思案するが、やがて恥ずかしそうに両手をほほにあてた。
「い、いえないですぅ~」
「ははは、詮索しないでおくよ」
 セリエはごめんごめんと微笑んだ。一体何をお願いしたかはサラのみぞ知るというやつだ。
 と、レクサスがあっと声をあげた。
「あそこでなんかみかん投げられてるぜー、いってみようぜー」
 いってみようぜーと言うときには既に5メートルぐらい前をレクサスは行っていた。いってみようぜーというか、行くからである。
 セリエとサラは顔をみあわせる。
「「みかん……?」」
 神社で投げられるものってもちだと思うんだけど……と思いつつも二人も続いてみかん投げに参加しようとレクサスの後を追った。



――――――――――



 人だかりができていて屋根から雨のようにみかんが下へと投げいれられている。
 セリエが近くの人に聞いたところ、どうやらもちが用意できなかったらしく代わりにみかんにしたという。
 と、いうのが信じられないぐらいすごい量のみかんである。これ最初からみかん用意していたんじゃないんだろうかというぐらいの。
「すごいみかんの嵐ですねー」
「これ若干輪に入っていくのが怖いまでありますよね」
「でもちょっと面白そうです!」
 私もいれていれて、と無邪気にサラは輪の中に入っていく。
 危なくないかなとか思っていたが、サラの周りは面白いように人が散っていく。
 というのもまあ当然と言うか彼女は常に冷気をまとっているのだこの冬にそんな寒気を重ねられたら誰だって避けていくものだ。それを知ってるのか知らないのか、その空いた空間で存分にみかんのとりにいそしむサラ。
 きゃーとれませーん!とか言いながらタイミングばっちりのジャンプをしたり、前のめりになってランニングキャッチしたりと謎のセンスを発揮したりしたかと思えば、顔面にみかんがあたってイテテとかわいい仕草をしたりしている。
「相変わらず謎に満ち溢れた運動センスだなあ」
 掴みどころが無いが、本人はいたって素直である。
「ほんとに面白い子だなあ」
 人に埋もれてろくにみかんをとれてないリザードを横目に、セリエはサラのことを見ていた。
 と、一層空気が冷えたと体が身震いで知らせる。
「あ」
 セリエはふと上をみあげた。飛ぶみかんの合間に白い落下物が見えた。
「雪かー」


――――
ice.jpg



 夕方前になってようやくサラは帰ってきていた。
 雪が降るほどの外の寒さから若干解放され、追撃のぬくぬくこたつで完全防備だ。
 そんな暖かい環境でサラは初詣で捕りにとったみかんをほおばっていた。
 寒さのせいか、冷たさのせいか、みかんはすっかり冷凍みかんになっていたが。
「冬なのに夏を味わってる気分になります」
 元旦といえば雑煮だが、冷凍みかんでちょっとした季節ハズレを楽しむのもいいではなかろうか。きっと忘れられない元旦になるだろう。
「ついでにそうめんでも食べようかなっ」
 毒食らわば皿まで。ここは夏に徹することを決めたようだ。
 そうして彼女のなんでもなくも輝く元旦は過ぎていくのであった。


スポンサーサイト
コメント
この記事へのコメント
コメントを投稿する
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可する
 
トラックバック
この記事のトラックバックURL
http://pallet0909.blog123.fc2.com/tb.php/318-33bce0a4
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
この記事へのトラックバック
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。