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ごにょごにょ
小説とか日ごろの雑記を投げっぱなしにしてるブログ。 妄想全開(何
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昼に咲く朝顔を求めて
クーリエの東方創想話に投稿したものです。

射命丸文とチルノのほのぼのストーリー。
いつもどおり霊夢がいるよっ。
――――――――――


「味の薄いお茶ですねえ、いつものことながら」

 射命丸文は何となしに呟き、お茶をすする。

「そんなこと言って、あんた何杯目よ」

 隣の博麗霊夢は肩をすくめつつ、お茶をすする。
 ここは博麗神社の縁側。秋が近いとはいえまだまだ残暑の厳しい日が続いている。
 今日も快適とは無縁の蒸し暑さだ。

「こう暑いと喉が渇くんですよねー、あーあついあつい」

 一振りで突風をも起こす天狗団扇で自分にそよ風を送る文。
 しかしそのそよ風が既に湿っているのだからどうにも効果が薄い。
 そういうわけで文はネクタイを緩め、上着のボタンもはずし、靴も脱いでいた。
 いつもピシっとした格好を保っている文がこうも乱れていると泰然自若が売りの博麗の巫女も顔をしかめてしまう。

「酷い格好ね……。あんたの後輩が見たら泣くんじゃないの」
「あぁ、マズイかもしれないですね」

 そう呟いて「おかわりください」と空になった湯のみを顔も向けずに霊夢に差し出す。
 横柄な態度にはぁ、と息を吐きつつも霊夢は急須で湯飲みに冷茶をそそぐ、湯飲みを通して文の手に冷気がつたわった。

「おぉぉ、この注がれる時の手にくる冷たさ、堪らないですねー……あれ、全身が冷たくなってきました」

 ぶるりと、文の体が一つ震えた。
 霊夢はこの寒さには自若の構えでその原因を見上げた。

「あら、珍しい奴がきたわね」
「あや?」

 霊夢が空を見上げるのにつられて文も顔を上げると自身の体の変化に納得する。
 少し遠くの空に見える小さい影。
 あれは近くの霧の湖で一番有名な氷の妖精、チルノだ。

「なんか手に持ってるわね」
「そうですね」

 チルノは神社に降り立つと一目散に霊夢に駆け寄ってきた。

「れいむー! あ、それとてんぐ」
「ついでよばわりですか? 酷いですよチルノさん」
「いつもあたいの周りをちょろちょろうるさいんだもん!」
「チルノさんと一緒にいると色々楽しい事が起こりますから」
「あたいは楽しくない!」

 文はいつの間にか取材モードだ。ついさっきまで乱れていた服も整っている。
 霊夢は「いつ直したんだ」と腰に両手をやってため息をついた。
 このまま会話をさせておくのは時間のムダだと、ちょんちょんとチルノの肩をたたいてやる。

「で、あんたどうしたのよ」
「あ、そうそう! これみてー、キレイなお花!」

 チルノが霊夢に見せたものはつる状の青色の花だった。
 どこで調達したのか植木鉢にきちんと植えられており支えの棒に花が巻かれている。
 「へえ」と霊夢が物珍しい声を上げた所に、文が「あやややー?」と声をあげた。

「キレイなお花って……しぼみかけじゃないですか」
「あれ? さっきまで咲いてたのに……」

 どうしたんだろう? と首をひねるチルノ。
 霊夢はしぼみかけた花を見やると「それもそうだ」と苦笑した。

「これは朝顔ね」
「アサガオー?」
「朝にしか花を開かない植物なのよ」
「えー」

 説明を聞いてチルノは不満をあげた。

「キレイなお花なのになんで? ずっと咲いてればいいのに」
「なんでって言われても、そういう花なんだからしょうがないでしょ」
「えー」

 チルノは納得がいかないと口を尖らす。
 霊夢は「どうしようもない」とお茶をすする。
 そんなやりとりに沈黙を守っていた文が、ここで「あ、そういえば」と口を開いた。

「チルノさん。私、朝顔を昼まで咲かす方法があるっていう風の噂を耳にしたことが!」
「あんた――」

 最初に言葉で反応したのは茶をすすっていた霊夢だった。
 まゆをひそめて先を続けようとしたところで――。

「ほんとに!?」

 と、嬉しさいっぱいにチルノが霊夢を遮って応えた。
 文は「えぇ」と大きく首を上下させた。

「じゃあ私探してくるーっ!」
「あ、ちょっと!」

 チルノは目を輝かせながら善は急げと神社を飛び出した。
 霊夢の引き止める声も全く聞こえてないようで、振り返ることもなく一直線に空の彼方へ行ってしまった。

「わくわく。影から密着取材です!」

 文は早速、愛用のカメラのメンテナンスを始めていた。
 霊夢はチルノが空に消えていくのを見届けた後、ため息をついて腰に手をやった。

「あんた、また妙な嘘を」
「嘘ではありませんよ。なんたって『風の噂』ですから」

 ジト目の霊夢もどこ吹く風、文は悪びれずにメンテナンスを続けている。
 再び霊夢はため息をつき「まあいいけど」と縁側に座り込む。
 このブン屋には珍しい事でもないし、霊夢はチルノの肩を持つ気もないので特に追及もしないのだ。

「それにしても露骨ね」

 恐らくチルノがその「昼まで咲かせる方法」を四苦八苦して探す所を取材して、最終的には「実はそんなものありませんでした」と言う、そんなドッキリ仕立ての記事を作るのだろう。
 勘の鋭い霊夢じゃなくても、文を知っていれば容易に想像がつく。

「いやー最近ネタが無くて困ってるんですよ。ネタが無いと面白い面白くない以前ですから」

 メンテナンスを終えて「失礼します」と霊夢の返事も待たずに不満顔の彼女の写真を一枚パシャリ。
 写りがいいのを確認すると、ひょいと縁側を立った。

「ま、そりゃそうね」

 写真撮られるのも今更と、霊夢は特に嫌な顔もせずにただ頷いた。

「じゃあ、私は取材対象を追っかけるのでこれにて!」
「はいはい、いってらっしゃい」

 文は軽くステップして宙に浮かぶと、風の速さで取材対象と同じ方向へと飛んでいった。
 あの速さだと物の数十秒でチルノに追いつくことが出来るだろう。
 天狗に先導された強い風が神社に吹き、霊夢の髪を宙へと流す。

「全く……取材になるといつもこうだわ」

 霊夢は湯飲みに残ったお茶を見ながら恨めしそうに言葉をこぼすのであった。


――――


「ちぇん、みてみてー」
「わー、キレイな朝顔ー。今しぼんでるけど」

 チルノはまずは黒猫の橙をあたっていた。
 彼女は普段から集まって遊ぶ仲間の中ではいちばんあたまがいいのだ。

「そうなのよー。この花キレイなのにねー。少なくとも昼までは咲くべきだと思うのよ!」
「そうだね、昼まで咲いてくれたらその分沢山見てられるもんね」

 橙は朝顔の由来を知っているようで、チルノの願望に少しだけ苦味を浮かべた。

「それがね、昼まで咲かせる方法があるのよ!」

 チルノはえっへん、と腰に手をやって胸をはる。
 「くらえ!」とばかりに驚愕の事実を叩きつけられた橙は体を引いて驚く。
 朝顔は朝にしか咲かない、それは浅知恵だとチルノに言われたようなものだから。

「えええええ!? ど、どんな方法なの?」
「――ちぇん知らない?」
「えっ」
「えっ」

 橙が小さく声をあげるとチルノが「どうかした?」とでも言わんばかりに呼応した。
 頬を掻いて「困ったなー」と唸りつつ少しだけホッとする凶兆の黒猫。

「ごめんね、知らない」
「なーんだ、知らないのかー」
「うーん、でも紫様なら知ってるかも、ていうかできるかも」
「ほんとに!?」

 心底残念がるチルノに橙はこの世の摂理すら操れるご主人のご主人の名前を出す。
 しかし、名前を出した所で致命的なことを思い出した。

「あっ、でも今はお盆明けだから寝てるかな……」
「なにそれー、つかえなーい」

 チルノがそう口にしたときだった。
 突然チルノの頭にごん、という鈍い衝撃が走る。

「あだっ!……いきなりなんなのー!?」
「大丈夫!?」

 橙が不意の衝撃に頭を抱えるチルノに駆け寄る。
 チルノの近くには黄金に光るたらい。
 橙は聞かれていたか、と苦笑した。

「ごめんねー、力になれなくて」
「いいよっ、まだアテあるから。じゃねっ!」

 チルノはたらいの痛みもなんのそのと立ち上がると、空の彼方へと飛んでいった。
 勿論、この光景は少しはなれた所から射命丸文は観察していた。
 時折カメラで撮影をしながら、文花帖にメモを走らせる。
 「たらい激突」と書いたところで、文はクスッと吹きだした。
 「たらいとか、あの隙間妖怪も古臭いですねー」

 
 その二秒後、鈍い音と「あだっ!」という声が響いた。


――――


「朝顔を昼まで咲かせる! 幻想郷では常識にとらわれてはいけないのですね!」

 チルノの説明に「そういうのもあるのか!」とグッと握りこぶしを作るのは東風谷早苗である。
 彼女の能力が「奇跡を起こす」ということを知っていたチルノは次に彼女の所をたずねていた。

「れーむと違ってキセキをおこせるんでしょ? やってよ!」
「……まさか私の能力で?」
「うん、だっておこせるんでしょ?」

 チルノのお願いに早苗は固まってしまった。
 心待ちにしている目の前の妖精に彼女は苦々しい笑いを浮かべながら「すみません」と言葉をつむぐしかなかった。

「いえ、あの、私が起こせる奇跡は八坂様や諏訪子様の御力をお借りしているので、限定されているんですよ……風を起こすとか雨降らすとか……」
「できないの? ダメじゃん、キセキとかおおげさね!」
「――」

 グサ、などと言う表現では済ませられない。
 バキッという大きな音をたてて、早苗の心の木が根元から崩壊した。
 チルノは呆れたと肩をすくめる。

「変にきたいさせるだけれーむよりたちが悪いわ、あー時間のムダだったー」
「うぅっ……」

 トドメの一撃を食らわせてチルノは空へ飛び立った。
 切り株すらぶっ飛ばされて立つことすらできない早苗を残して――。


「ここで私が更にもう一撃加えたらこれはこれで面白そうですね!」
 
 と、言いつつも取材というのは初志貫徹が基本。
 文はまた後日とばかり、文花帖に早苗のネタを大きくはっきりと書き込み、チルノの後を追うのであった。



――――――――――――


「なに? 昼と夜をなかったことにしてくれ?」

 チルノは今度は人里におりてきていた。
 彼女が話しかけている人里の守人、上白沢慧音は自分の能力を頼りにやってくる者をそれこそ何百人と相手してきた。
 が、それでも目を丸くして驚くチルノの提案である。

「朝だけにしたらアサガオは昼どころじゃなくてずっと咲いてられる! あたいってば天才」

 グッ、と握り拳をつくるチルノ。
 「確かにそうだな」と斬新な発想を慧音は口で肯定こそするが、すぐに首を横に振る。

「だが、それはできない相談だな。幻想郷がめちゃくちゃになる」
「んー、そうかな?」

 口に手を当てて首を傾けるチルノに慧音は指を立てて説明する。

「日の光がずっと出てると、夜寝づらいだろう?」
「あー! あたい暗くないと寝付けない!」
「それに朝だけということは朝ごはんしか食べられなくなってしまう」
「あー! 朝ごはんだけじゃやだ!」

 ポンと手を叩くチルノに「そうだろうそうだろう」と何度も頷く慧音。
 チルノもそれに呼応して納得とばかりうんうんと頷いた。

「流石に自分のみをけずるのはきついわ! 他に体当たりしてみる!」
「行ってらっしゃい。しかし体当たりはするなよー」

 慧音はひらひらと手を振って元気な氷精を見送るのであった。
 


「相変わらずうまくかわしますねえ」

 私もよくかわされるんだよなー、と文はポリポリと頭をかく。
 取材しても巧みな話術でかわされ続けられており、どうも面白い話が露出しない。
 とはいえ、その老獪な技術を文は今回は感謝せねばならなかった。

「朝ごはんは抜いてますからね。「物」を食わずに生きるのはいささか楽しみがないというものです」 

 そんなことを言って、文はまたもや空に飛ぶのであった。


――――――――――――


 湖のほとり――ここは妖精が数多く存在しているところだ。勿論チルノとて例外ではない。
 そんな自分の住処で灯台下暗し――チルノは近くにそびえたつ紅魔館のメイド長を連れてきていた。

「時間を巻き戻して、朝の時間を保てばできるんじゃないかしら」

 チルノから事情を聞いた咲夜はしぼみかけた朝顔を目の前にしてそう言った。
 「ほんとに!?」とチルノが手を叩くと、すっと植木鉢に咲夜は手をかざす。

「こういう風にこの周りだけ時間を止めれば……」

 ぎゅーん、と植木鉢のまわりの時間が巻き戻って停止し朝顔が花を開いた。
 チルノは花が開いていく模様を見ておおはしゃぎだ。
 
「おおおおおおお! すごいすごい! あたいの次ぐらいにすごい!」

 「光栄ですわ」と微かに笑う咲夜にはしゃぎつづけるチルノ。
 そんな光景が数分続き、咲夜がふと沸いた疑問を口にする。

「……ところでこれはいつまでやってればいいの?」
「毎日朝、私の寝床まで来て昼までやってくれればいいよ!」
「却下」

 笑顔のまま咲夜はチルノに死刑宣告をした。
 当然チルノは不満顔だが「朝は忙しいので無理」と咲夜は譲らない。
 
「ダメダメダメ! ずっと昼まで咲いてなきゃダメー!」
「諦めなさい」
「ケチんぼ!」
「私だって仕事があるんだから仕方ないでしょう」
「むー」
「――」
「むぅぅぅぅ!」

 咲夜は根負けして息を吐くと「まあ、週一ぐらいならいいから」とポンポンと頭を軽く叩いてやる。
 「それじゃダメ!」と妥協案も蹴飛ばすと、咲夜は頭を叩いていた手とは反対の手でナイフを構えていた。

「これ以上は弾幕勝負で決めることになりますが」

 咲夜の穏やかな声色とは裏腹に目は冗談も優しさも語っていなかった。
 チルノはびくっとなって騒ぐのをやめる、いつもコテンパンにされているのだ。
 それを見て裏の無い笑顔に咲夜はもどった。

「いい子ね、また話には付き合ってあげるわ」

 咲夜は優しく手をチルノの頭にのせると、次の瞬間にはチルノの前からかき消えていた。
 残されたチルノは納得がいかないとふくれっつらをしつつも何か考えているようだった。


「ネタも溜まったし、そろそろ突撃インタビューを入れて〆る頃合かしら……!」

 木陰から撮影していた文が、ここぞとばかりにチルノの前に出ようとするとチルノが「うん!」と大きく頷いた。
 「む?」と文は唸って再び木陰に隠れる。

「……しょうがない、こうなったらあそこにいくしかない……!」
(はて、まだ誰かにあてでも……?)

 顔の広い文でもそろそろ彼女が訪ねそうな人物の顔が思い浮かばなくなってきた。
 覚悟を決めたように飛び去るチルノに文は誰だろう?と首をかしげながらふらふらと追いかけていった。


――――――――――――


「あら、いつぞやの妖精さん。なにか用かしら」
「え、えっと……」
 
 チルノは指と指をちょんちょんとくっつけあう。
 少々の差では怯まないチルノが完全に気圧されていた。

「言ってくれないとわからないんだけど?」

 チルノの目の前に訪ねた本人はいたって普通に対応してるつもりだ、至極普通に。
 しかしチルノは勿論、何十メートル先にいる射命丸でさえ威圧を感じていた。
 文はごくりと唾を飲んでカシッと望遠レンズを取り付けた、勿論最大値ギリギリの物陰に隠れている。
 震える手つきでカメラを覗き込んで相手の顔をとらえる――怖いくらいの上品な笑顔と白い傘にストライプのスカート、風見幽香の顔を。

(ま、まさかここに来るとは……)

 コテンパンにされたあの花の異変を思い出し、文はカメラを持つ手が少しだけ震えていた。
 覚悟を決めてレンズ越しに覗いたのにこの有様である。
 鴉天狗随一の実力を持つ文でさえこうなるほど、風見幽香は強い。
 そしてそんな幽香に面と向かって合わせているチルノは――。

(それほどまでに彼女は)

 珍しい思考がよぎるが文はぺち、と頬を一回叩く。

(――いけませんね、取材取材)

 カメラ撮影に邪念があるといい写真はとれない、が文の持論だ。
 もの珍しい思考を切って捨てて再びレンズを覗く、記者魂という奴である。
 文が再びレンズを向けた頃にチルノのとぎれとぎれの説明が終わったらしく、幽香は意外な提案に少しだけ口を開いた。

「アサガオを昼まで咲かせる?」
「お花のお姉さんなら……できるでしょ?」

 チルノが大事そうに抱えている植木鉢に、幽香は目を落とす。
 勿論、朝顔は自分の摂理に逆らうはずも無くその花を閉じていた。
 幽香は口元をあげ目尻を落とすと、チルノの頭を優しくなでた。

「あなたが花の美しさを理解してくれたのは嬉しいわ――」

 チルノは期待に瞳を揺らし、顔をあげる。
 しかしそこにある幽香の笑顔は否定の色で染まっていた。

「でもね。自然は『自然』だから自然という美しさを保てるのよ」
「むー?」

 チルノは首をかしげて「わからない」と不満を漏らす。
 幽香は笑顔を崩さずもう一度頭をなでた、今度はぐしぐしと少し強く。

「あなたの願いは聞く事はできないわ。それがわかるようになったらまた来なさい」
「うーん……うん」

 フラワーマスターの幽香に食い下がるわけにもいかず、チルノは小さく頷くとゆっくりと後ろを向いてとびたっていった。
 ちなみに文は、話が終わったと見るやカメラを速攻で片付けて明後日の方向に飛び去っていた。


――――――――――――


「あーあ、結局ダメだった、あたいださい……」

 その次の日の昼、チルノは湖のほとりで水を蹴り上げていた。
 幽香に言われてから一日中湖の上で頭をひねって考えた。
 すぐにその答えを出して幽香に今度こそ……と思っていたのだが、頭の上に電球がきらめくことは無かった。
 膝を抱えて塞ぎこんでいると、ガサッと草が鳴る。
 チルノが振り返るとそこには文がいた。
 
「なんだてんぐか、あたい見つけられてないよ」
 
 ふい、と悔しそうにチルノは文から顔を背けた。
 自分の前に現れたということは現状を聞きにきたのだろうと思ったから。
 しかし。

「そんなことはどうでもいいんです! チルノさん大発見なんですよ!」
「えっ?」
「昼までさいてるアサガオがあったんですよ!」
「ええっ!」

 特上の明るい声で両手に植木鉢にもち、駆け寄ってくる文。
 チルノも立ち上がってその植木鉢を受け取る。 

「これです、ほら今昼なのにさいてるでしょう?」
「すげえ」

 青い花ではなく白い花ではあったが、確かに今は昼時で確かにこの花は花を開いていた。
 チルノは今まで考えていたことを全て吹っ飛ばして喜びを爆発させた。
 ――自分が見つけられなかったこととか、幽香に言われたこととか全部吹っ飛ばして。
 文は微笑んで続ける。

 「チルノさんに差し上げますよ。チルノさんが頑張ってるのは知ってましたから」
 「いいの? やったー!」

 更に満面の笑みが塗り重ねられ、はじけた。
 うんうん、と文は頷くとカメラを構える。

 「いいですねその笑顔、写真一枚とらせていただきます!」

 パシャ!という眩しい音と共にこの朝顔騒動は幕を閉じたのであった。



―――



―――――



―――――――


 その日の午後、太陽が真上ででしゃばっている時間から少し過ぎたあたり。
 霊夢と文はまた揃って神社の縁側にいた。
 文は霊夢に今回の事件をかいつまんで聞かせていた。
 霊夢は文の話を聞き終えると冷茶をことり、とお盆に置いた。

「で、ヒルガオをチルノに渡してきたと。きたない天狗ね」
「うぐっ」

 一発でばれていた。チルノの行動しか言っていないというのにだ。
 相変わらずこいつの勘は怖い、下手したら鬼よりも幽香よりも怖いと、文は少しだけ汗ばんだ。

「よ、妖精にアサガオとヒルガオの区別なんてつきやしませんよ!」

 腕を組んで開き直る文にジト目の霊夢であったが「まあいいか」と追求をやめることにする。

「本人が喜んでるならいいわ。知らぬが仏ってこともあるわ」
「そうそう! そうです! 私も当初とは予定が違いますがなかなかいい記事がつくれそうで一石ニ鳥ですよこれは!」
「調子いいやつね……」
「こんにちわ」

 と、いつの間にか神社の鳥居前に白い日傘を差した妖怪が立っていた。
 霊夢は湯のみをさっと置くと、ひゅひゅん、と御幣を構える。
 
「あらあら、そんな怖い顔しないでほしいわ」
「それならなんでわざわざ気配消してくるのかしら? 風見幽香」
「冗談よ」
「あんたの冗談はちょっと笑えないのよ」
 
 嘆息しつつも、敵意がないことを判断すると構えた御幣をポイッと投げ捨てて湯飲みを手にする。
 ずずず、と一杯お茶をすすると「また珍しいわね、なんかよう?」とすっかりいつもの霊夢にもどっていた。
 幽香はゆっくりと歩きながら笑顔で横に首をふった。

「いえ、そちらの天狗に……」
「あやっ!? 私ですか!?」

 文は自分の顔に指をむけると、幽香はニッコリ笑顔で今度は縦に首を振った。
 
「朝顔がたぶらかされたと風の噂をきいたので、説教しにきました」
「どきっ」
「ついでに花想いの妖精さんもかわいそうだったわ」
「かっ、風の噂でしょう? 嘘です! 濡れ衣です!」
「あらあら、風の噂に嘘も濡れ衣もあるのかしら? 信じるか信じないかの二つに一つじゃなくて?」

 ひぃ、と文は小さく悲鳴をあげた。
 ザッ、と幽香が石段を一つ踏み進むたびに文はガササッと二つ後退する。
 そんなことをしてるうちに文は神社の縁側に膝裏をぶつけた。
 冷や汗が頬をつたう、隣には両手を組んであくびをしている霊夢がいた。

「れ、れ、れ、れいむさん助けてくれないかなー」
 
 ちらりと霊夢を見やると、返事の代わりに澄ました顔で片手の平を見せられた。
 「はい、はい!」と文は急いで懐から銭を取り出して渡す。
 霊夢はジャラ、と手の中で銭の音をきいてニッコリ笑顔。
 
「幽香、その説教は私の分も一緒にお願いするわ」
「特に受ける理由はないけどいいわよ」
「ええええええええ!」

 目尻に涙を溜める文を、パシャッと霊夢は彼女愛用のカメラで激写した。
 「ふーむ、いい顔するわねー」とくすくすと笑う霊夢に涙声で怒る文。

「あんまりじゃないですかー! 約束反故ですよ!」
「私は手を差し出しただけよ、あんたが勝手にお金くれただけでしょ」
「うぅ、霊夢さん酷いです!」
「たまにはしっぺ返し食らっておくのもいい経験になるわよ。安心しなさい、山に帰れなかったら泊めるぐらいはしてあげるから」

 と、言い残すと霊夢は裏の家へと向かっていってしまった。
 そんな会話をしてる間に幽香と文の間は目と鼻の先まで近づいていた。

「さあ、構えなさい? あなたなら善戦ぐらいできるはずよ」
「ひいいいい! おたすけぇ!」
 
 その後、文がどうなってしまったのかは言うまでもなかった。
 次の日の文々。新聞の見出しは『鴉天狗、フラワーマスターに喧嘩を売ってボコボコ!』という自虐記事に訂正させられたそうな。


おわり
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